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2024/01/24

カウンセラーは自分の意見を言ってはいけないのか

 多くのカウンセリング講座で、カウンセラーは自分の意見を言ってはいけない、と習う場合があります。しかし、我々カウンセラーはロボットではありませんから、感情や思考、それぞれに異なる価値観を持って生きる人間です。クライエントさんも、カウンセリングに来てロボットに向かって淡々と悩みを呟くわけではありません。“人と人”との信頼関係のもと、悩みの解決に向けて人間的成長を図っていくのがカウンセリングですから、カウンセラーは1人の人間として向き合わなければなりません。

 

 人のコミュニケーション方法として、言語によるものは10%程度にしか過ぎず、視線や表情、姿勢、身振りなど、非言語により表現されるものが大半を占めるというメラビアンの法則をご存知でしょうか。つまり、口を閉じていても、感情や思考は無意識に身体全体から表現されており、言葉として発していなくても相手には伝わるようになっています。
意見を言ってはいけないとしても、相手に対して心の中で否定的な感情や懐疑心を抱いていると、黙っていても駄々洩れなのです。もっと悪いのは、目の前のクライエントさんを肯定しているように見せかけておいて心の中では嫌っているということは、堂々と嘘をつき続けているということです。これでは信頼関係なんて築けませんから、カウンセラーの意見を言ってはいけない、という教えは納得ができませんよね。

 

 カウンセラーは、自分の感情や意見は素直に伝えるべきだと、私は思っています。
相手の気持ちに共感できるか出来ないか、考え方や価値観に対して率直にどう思うのか。
同じ場所に立ち視線を合わせ、クライエントさんのより良い未来に向けて真剣に考えているカウンセラーの姿勢が伝わることで、1人の人間として尊重されていると感じられるようになるからです。「1人じゃないんだ」という安心感が、新しい一歩を踏み出す勇気を支えてくれるのです。

 

 それでは、「どうしても良く思えない」「はっきり言って嫌い」など相手に対して嫌悪感を抱いてしまった場合はどうしたらよいのでしょうか。
答えは簡単です。自分では対処できかねる旨を伝え、他のカウンセラーに相談していただくよう辞退します。そうすれば嘘をつく必要もなくなり、何よりもクライエントさんのお金と時間と労力を無駄にせずに済みます。せっかく相談してきてくれたのに申し訳ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、どのような状況においても、カウンセラーとして提供できるクライエントさんにとっての最大の利益とは何かを考えると、判断しやすくなるかと思います。

 

 ただし、これらを実現するためにはカウンセラーが自分自身をよく理解し、揺るぎない価値観を持っておく必要があります。どのような問いかけに対しても真直ぐに応えられるバランスの取れた思考、相手を尊重する素直さ、異なる価値観を受け入れられる柔軟性など、率直な意見の裏打ちとなる人間力がカウンセリングの度に試されているわけですから。どんなにキャリアを積もうと慢心することなく研鑽を積み続けられる謙虚さを忘れてはならないと思いますよね。

カウンセラーは自分の意見を言ってはいけないのか2
カウンセラーは自分の意見を言ってはいけないのか2
カウンセラーは自分の意見を言ってはいけないのか3
カウンセラーは自分の意見を言ってはいけないのか4

2024/01/23

人はなぜ悩むのか

 悩みを抱えているという実感があるとき、それは本当に苦しい時間です。目の前に立ちはだかり行く手を阻む鬱陶しい敵として、我々はその除去に猛進します。普段よりもちょっとだけギアを上げて、なるべく早く解決できるようアイディアを捻り、あらゆる選択肢を比較検討して最善策を模索します。 
 その過程をこうして文字にしてみると、何だか仕事で大きなプロジェクトに取り組んでいるように見えますよね。仕事をしている人もそうでない人も、大人も子供も、誰もが無意識にこのプロセスを行っています。
 会社は、社員が安定して暮らしていけるよう雇用の必要性を創出し続けなければなりません。そのため、利益を生むプロジェクトを次々と立ち上げ成功させていく、というのを繰り返していくと、結果的に会社が大きく成長し更なる雇用が生まれます。もしくは規模を変えずに長年に渡り安定的に雇用を守り続けていくことができます。

 

 人の悩みも、それと同じです。
 100年余りという長く限られた時間を有意義に生きるという目的を果たすためには意欲を創出し続けなければなりません。生きる意欲を持ち続けるには、何らかの課題をクリアし、成長を実感して更に上を目指していくという好循環の動力が必要となります。その何らかの課題、つまり会社でいうプロジェクトが個人における『悩み』なのです。プロジェクトの成功が利益を生むように、悩みの解決は成長をもたらし生きる意欲に繋がります。
ですから、なぜ人は悩むのかという問いの答えとしては、“生きるため”です。

 

 老若男女を問わず、どのような立場であろうと関係なく、全ての人に、それぞれに応じた悩みが訪れます。
時には悩みから逃げたくなる時もありますよね。どんなに目の前に立ちはだかろうと、目を逸らし何事もなかったかのようにスルーしたくなる時もあります。なぜなら、先に申し上げたように悩みの解決には普段よりもちょっとだけ多めにエネルギーを要するように感じるからです。目の前の悩みの大きさに怖気づき、「今は立ち向かえない」とへたり込んでしまうこともあります。それでもいいんです。なぜなら、悩みは必ずまたやってきてくれるからです。悩みはその人の成長に必要だから訪れるわけですから、充電して悩みに向き合えるようなコンディションになった時に、再び、時と人と場所を変えて同じ悩みがやって来てくれます。逃げても逃げても必ず追っかけてくる、なぜなら悩みはその人の成長を決して諦めずに信じ続けてくれているからです。
悩みの外見は醜悪かもしれません、しかしその存在は何とも愛おしく思えてきますよね。

人はなぜ悩むのか2
人はなぜ悩むのか2
人はなぜ悩むのか3
人はなぜ悩むのか4

2024/01/22

カウンセリングの傾聴とは

 傾聴とは、カウンセラーがクライエントさんの話を聴く際のカウンセリングスキルの1つです。
話を聞くだけなら誰でもできる、と思われるかもしれませんが、我々はカウンセラーですから、ただ聞くだけでは、それは仕事をしているとは言えません。
友人や知人を相手に愚痴るのではなく、わざわざ時間と労力を使ってまで相談したいと思って下さったクライエントさんの要望に応えられるだけのカウンセリングを提供できるのがプロフェッショナルです。資格を冠に名乗る以上、プロとしての仕事をしなければといつも思います。

 

 そんなプロカウンセラーがどのようなテクニックを使っているのかというと、単に内容を把握するために情報収集をしているわけではありません。 
傾聴とは、英語でアクティブ・リスニングと言います。 
日本語の『聞く』と『聴く』の違いにおいても、音が勝手に耳に入ってくるのが『聞く』、理解しようと意識的に耳を傾けるのが『聴く』とあり、受動的か能動的かという明確な違いがあります。
つまり傾聴とは、耳だけでなく心も傾けて共感しながら、置かれている状況から思考や価値観まで相談者そのものを理解していく作業です。感覚としては、クライエントさんが伝えようとしてくださっているメッセージをこちらから掴みに行く、というかなりアグレッシブな意識でやっております。

 

 傾聴には力がある、とよく言われますが、私もそう思います。
 それは、悩みや苦しみを吐き出してスッキリするカタルシス効果もありますが、それだけではありません。傾聴により自分の人生のために誰かが本気で向き合ってくれる、存在そのものを尊重してもらうという体験を通して、自分自身と向き合えるようになるからです。そうすると、カウンセラーを介して悩みや問題を客観的に見つめられるようになり、解決に向けて自ずと思考が展開してきます。逆に言うと、そこまでの傾聴ができているか、というのがカウンセラーとして毎回の相談で問われているわけです。

 

 カウンセリングは、カウンセラーに問題を解決してもらう場ではありません。問題を解決するのは、あくまでも問題意識を持つクライエントさんご自身です。クライエントさんが自分の価値観に基づき、自信を持って問題を乗り越えていけるようサポートするのが我々カウンセラーの役目です。 

 「人の問題を横取りしてはいけない。」と、よく思います。 
問題とはその人が成長する為に必要な過程です。悩んでいる、そのこと自体がクライエントさんの人生にとって尊いことであり、カウンセラーが問題を解決してしまうと成長が阻害されることになるのです。この認識が持てると、傾聴の重要性が理解でき、取り組み方も変わってくるのではないでしょうか。クライエントさんが求める“聴く仕事の価値”を、カウンセラー自身が最も理解していなくてはと思いますよね。

カウンセリングの傾聴とは2
カウンセリングの傾聴とは2
カウンセリングの傾聴とは3
カウンセリングの傾聴とは4

2024/01/20

カウンセラーの基本姿勢のポイント

 カウンセラーの基本姿勢として、どの講座でも必ず教わるのが『受容・共感・自己一致』だと思います。カウンセラーの資格をお持ちの皆さんご存知ですよね。しかし、カウンセリングの際に、毎回これが完璧にできていると言える方がどの位いらっしゃるでしょうか。 

【受容】
相手を受け入れることですが、そこには“無条件の肯定的配慮”が大前提となります。相手がどのような人物であろうと、行動や言動が気に入らなくても、評価したり区別することなく、ありのままを受け入れることです。 

【共感】
クライエントさんの感情を、あたかも自分が感じているかのように理解し、クライエントさんの体験している世界を共有する作業です。時にはクライエントさん以上に気持ちを理解することで、クライエントさんの感情が動き、自然と思考が展開していく場合もあるくらい、共感には力があります。 

【自己一致】
カウンセラー自身が嘘偽りのない態度であることです。表面的な見せかけのお世辞や慰めは、クライエントさんに一瞬で見破られ、信頼関係が崩壊してカウンセリングが破綻します。相談を聴きながらカウンセラー自身がどのような気持ちになっているか、そこで気付いた自分の至らない部分からも目を逸らすことなく向き合える強さが求められます。

 この3点全てをフル装備した状態で、カウンセリングの頭から終わりまで、クライエントさんの話に全集中して傾聴します。
これが意外と膨大なエネルギーを要します。
もちろんはじめのうちは出来ません。自転車の乗り始めのように、左に行きたくても右に寄ってしまったり、こっちを気にしていたらあっちがおざなりになってしまったり、おもちゃのロボットのようなぎこちない自分に情けなくなりますが、経験を積む中で意識しなくても自然とスイッチが入るようになっていきますので、諦めることなく辛抱強くトレーニングしていくことが必要です。
 

 とはいえ、目的地も分からずに走り続けていれば疲れて嫌になるだけですので、どこを目指していけばいいのか、ポイントのようなものがあります。それは、クライエントさんになりきり、クライエントさんの見ている、感じている世界を隅々までリアルに想像することです。そして、頭の後ろの方だけは自分を残しておいて客観的な視点を保っておく、という感じでしょうか。感性と理性を同時に働かせるのです。
 

 感受性や想像力を鍛えるには映画やドラマなどの映像作品で登場人物になりきってみるのがおすすめです。同じ作品でも見るたびに違う人物になりきってみると、色々な見方が学べます。 
 論理的思考を鍛えるなら、推理小説ですね。活字を脳内で映像に変換しながら結末に向けてあらゆる可能性を探る作業を繰り返し練習してみてください。
 

 人によって、感性の鋭い方、論理的思考が得意な方とそれぞれあるかと思います。一度に全部をやろうとすると分からなくなってしまうので、まずは自分の特性を知るところから始めてみてください。どんなに大きな問題も、分解して小分けにすれば、1つ1つが小さくなるので、取り組みやすくなります。この考え方は、カウンセリングや自分自身が問題に直面したときにも活用できますので、ぜひ覚えておかれるといいかと思います。

カウンセラーの基本姿勢のポイント2
カウンセラーの基本姿勢のポイント2
カウンセラーの基本姿勢のポイント3
カウンセラーの基本姿勢のポイント4

2024/01/19

カウンセリングとは

 本日より、カウンセリングの理論に特化した内容をご紹介していきたいと思います。
なぜそのような事を書こうと思ったかというと、そもそもカウンセリングのことを十分に理解している方が少ないと感じているからです。カウンセラーを目指す方々だけでなく、カウンセリングを受けるクライエントさんも、「カウンセリングに対するイメージは?」と問われたらポジティブなイメージが浮かぶ方は少ないのではないでしょうか。
そう、そもそもそこから間違っています。

 

 私の思うカウンセリングとは、『自分を育む栄養』です。

 

 悩んでいる人、病んだ人が受ける“闇の手前”にあるものでは決してありません。
カウンセリングとは、20世紀初頭にアメリカで高校生を対象として行われていた職業指導が始まりとされています。その後、仕事が上手くいかずに悩む人々の相談を受ける中で、クライエントの感情や思考を尊重しながら問題の解決に向き合えるよう人格的な成長をサポートするものとして確立されていきました。
もちろん苦しみを抱えておられる方々のお気持ちを温かく受け止め、再び前を向いて歩いていけるようしっかりサポートします。 
 ですが、苦しい時だけ受ければいいというものではありません。
人は、日々の生活の中であらゆる感情を感じながら生きています。些細な出来事で気持ちが揺れ動く、大したことではないけれど気になる、ということ、よくありますよね。実はそういう細かな1つ1つのタイミングに、人格的な成長のチャンスが潜んでいます。しかし、日常に忙殺され目の前のことに捉われていると、大概のチャンスをぼんやりとスルーしてしまうのです。
 

 それが、悩みがなくても定期的にカウンセリングを受け、自分を見つめる時間を持つことで、自分の感情の動きを敏感に察知できるようになり、自分の選択や行動に迷わずに済むようになります。そしてそれを繰り返していくうちに自分に自信が持てるようになっていき、気付いたら人格的に大きく成長しているということが起きるわけです。
これこそがカウンセリングの本来の目的です。

 

 その目的を理解し、クライエントさんの成長に寄与できるカウンセリングができるカウンセラーが日本にはそう多くはいない、という実情があります。立派な資格だけでは、良いカウンセラーかどうかを判断することはできません。理論やスキルだけでなく、カウンセラー自身の人としての在り方が問われる職業だからです。
 

 カウンセラーの皆さんは、クライエントさんからのどのようなご相談にも怖気づくことなく真直ぐに向き合えるだけの覚悟が持てていますか。 
 クライエントさんが感情的になった時、話が思わぬ方向へ展開し収拾がつかなくなった時、それでも冷静に向き合い続けられますか。
  上手くカウンセリングができないことをクライエントさんのせいにしていませんか。

 それらは全てカウンセラー自身の問題です。自分のダメな部分から目を逸らすことなく真直ぐに向き合い克服する為の努力ができる人こそ、良質なカウンセラーになれる人です。名札だけのカウンセラーとしてビクビクしながらクライエントさんの前に座り続けたいのか、真のカウンセラーとしてクライエントさんの人生に貢献していきたいのか、自分がどう生きていきたいのかを見極め、更なる成長を目指していきたいという方は、ぜひご相談ください。

カウンセリングとは2
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カウンセリングとは3
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